ちょっと思うころもあるので、今回は、「既存建物の改修」と「法律」という部分に焦点をあてます。
建築物というのはその存在が社会的な影響を与える可能性もあることから、建築基準法により規制を受けています。したがって、その規制に違反しているものについては行政処分や是正命令などが与えられ、その工事に関して関与した設計事務所、建築士、施工会社に対しても厳しい罰則が科せられます。
上の画像は、ネットで検索するとヒットしてくる「違反建築物に対する命令書」で、門真市の事例です。赤紙と呼んでいますが、これが工事中や完成後の建物に張られたら是正命令が出されているので従わないと罰則の適用を受けます。
基本的に違反建築物であっても第三者の資産ですので、それを強制的に取り壊したり、是正行為を役所が行うことは「原則」できません。まずは命令を出して従うように促すわけです。特に多いのは建築確認申請で提示されている建築内容とは違う建築を行っている事例や、住宅と言いながら全く違う用途の建物として運用されていたりする場合、あるいは、高さの規制を著しくオーバーしている場合など、確認申請を通したけど実際は違う建築物だったというようなことが多いのでは?と思います。
ですが、本来は建築確認申請を提出建物に対しては、建築完了検査というものを実施し、完了検査済証を受け取らない限り「法的に問題がない」とは言えません。
これは完了検査率の推移の資料ですが、現状ではほぼ100%近い検査率を誇るようになりましたが、平成10年以前は、検査率は30%を下回る状況でしたし、これが昭和の時代になるともはや住宅レベルでは公社住宅や住宅金融公庫融資物件でもない限り検査を受けるということはなかったわけで、確認申請は出したけれども、それがちゃんと法規制に従っているのか?という確認はほとんどなされていなかったわけです。
もちろん、建築途中でご近所の方がその規模や高さに疑念を持ち、審査機関である役所に通報した結果、違反建築物であることが露呈したという事例はあったとは思いますが、どちらかというとそれは稀な例であり、住宅に関する違反建築物というのは事実上なんの指導も受けてきていないというのが現状です。
また、所有者がほとんど意識せずに行う、新築後の工事、例えば車庫の建築や物置の設置など、法律など意識することなく、生活の利便性をアップさせるために行った建築行為が結果として建ぺい率違反や、防火避難規定上の違反などで違反建築物となる例もあります。
周辺土地の状況や道路状況の変化、また、大昔の建築時全く法規制を意識せずに「勝手に建てた」建物に対して、既存の建物を解体し新築する場合、接道の問題や建ぺい率の問題で、現在と同等レベルの建物など建築できない、いわゆる「再建築不可能物件」などというものあります。これらは、土地に対して資産税を納めているにも関わらず、建築できない土地としてほぼ資産価値のないものになってしまっている事例もあります。
また違反を含んだ建物を、令和の世になってから改造や改修、増築などで手を入れる必要が出てきた場合、結果として、それらの建築行為ができなくなるというのも、既存の建物が違反建築物である場合などでは今でも存在している問題です。
確かに法律に違反している建物が存在していることは社会的な公平性を阻害することになるとは思いますが、非住宅であればいざ知らず、一般的な住宅において同様に扱われ、再建築、改修等ができないというのは、空き家問題などを解決したいという施策や、住宅の耐震化率アップを目指したいという国策とは、相いれない状況ではないか?と思います。
違反内容を悪質なものかどうかも含め、個別の事案として協議し結論を出していく仕組みというのが必要なのでは?と強く感じています。