増改築等工事証明書

もうすぐ確定申告の時期になりますが、住宅などを新築したり、増改築したりする場合に、住宅ローンを組んで工事を行う場合などには「住宅ローン控除」という制度で所得税の還付などを受けることができるというのは意外と知られています。しかし、ローンを組まずとも、耐震改修や、省エネ性能アップのための工事、バリアフリー改修、あるいは、多世帯同居のための改修工事や子育て対応改修といった工事に対しても、かかった工事費用を所得税の還付対象にするというのをご存じでしょうか?

これらの増改築、リフォーム工事を行ったことを証明するための書類として「増改築等工事証明書」というものがあります。事実上、税務関連書類として作成されるような書類ですので、この手の書類は自治体の長の名前でしか作成されないと思われる方もおられると思いますが、そうではありません。これを発行できるのは、

① 建築士事務所に属する建築士
② 指定確認検査機関
③ 登録住宅性能評価機関
④ 住宅瑕疵担保責任保険法人

の4者です。このうち、①という部分で、設計事務所登録をしている工務店でも、この「増改築等工事証明書」を発行できるというわけです。ただし、単なる建築士では発行できません。必ず「設計事務所登録」をしている設計事務所に属する建築士でなければなりません。建築士の免許を持っているだけではダメなのです(この部分は士法上も重要で、事務所登録をしていない建築士が設計で報酬を得ることもできません。また別の機会に話題にいたします。)。

この「増改築等工事証明書」は一つのフォーマットに、すべてのケースを網羅した書類になっているので、一見煩雑な書類なのですが、理解すれば、「なんや、そういうことかw」ってくらい単純な書類ですwww

これは、その証明書の1ページ目なのですが、最初に書かれるのが証明してほしい人、つまりお客様の情報になります。そして、以降につづくのが、「どんな工事を、どうやってお金を工面して行ったか?」という部分を記載していくだけなのですw その際、何の税の還付を受けるつもりなのか?というところで、2つあります。1つは「所得税」、もう一つは「固定資産税」となります。

所得税の場合は、以下のモードになります。

1.償還期間が10年以上の住宅借入金等を利用して増改築等をした場合(住宅借入金等特別税額控除)

2.償還期間が5年以上の住宅借入金等を利用して高齢者等居住改修工事等(バリアフリー改修工事)、
  特定断熱改修工事等若しくは断熱改修工事等(省エネ改修工事)、特定多世帯同居改修工事等又は
  特定耐久性向上改修工事等を含む増改築等をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別税額控除
  (工事完了後、令和3年12月31日までに入居したものに限る。))

3.住宅耐震改修、高齢者等居住改修工事等(バリアフリー改修工事)、一般断熱改修工事等(省エネ改
  修工事)、多世帯同居改修工事等、耐久性向上改修工事等又は子育て対応改修工事等を含む増改築等
  をした場合(住宅耐震改修特別税額控除又は住宅特定改修特別税額控除)

4.償還期間が10年以上の住宅借入金等を利用して特定の増改築等がされた住宅用家屋を取得した場合
(買取再販住宅の取得に係る住宅借入金等特別税額控除)

これら4つのモードに対して、一つずつ書類がありますので、その項目を埋めていくだけの単純なものです。


固定資産税の場合には、以下のモードになります。

1-1.地方税法施行令附則第12条第19項に規定する基準に適合する耐震改修をした場合

1-2.地方税法附則第15条の9の2第1項に規定する耐震改修をした家屋が認定長期優良住宅に該当することとなった場合

2.熱損失防止改修工事等をした場合又は熱損失防止改修工事等をした家屋が認定長期優良住宅に該当することとなった場合

要するに、耐震改修をしたか?したならそれが長期優良住宅の認定を受けたか?、あるいは、省エネ改修工事をしたか?の3つだけというわけです。

事実上、税金の還付を受けるための書類です。それ以外の使い道というのはそれほどないと思います。極まれに補助金を受ける場合の工事証明として出させる場合があるかもですが、こんなメンドクサイ書式よりも、一筆、「工事やりましたよ?」っていう感じの証明で終わることのほうが多いです。

そして、この「増改築等工事証明書」の最後の部分で、証明者の欄があるのですが、ここで、我々のような建築士が記名して押印することで証明書となります。ちなみに、押印省略は認められていない書類です。

言い換えますと、建築士に与えられている権限として、建築士は税法上の書類を発行できるというわけなのです。税法上の証明書類を作成し、証明者になれるという役割を担っているのが建築士であるとも言えます。これは、すさまじく重い責任を背負わされているということなのです。なんといっても、税金に対する書類ですので。

弊社では、原則として住宅ローンをお使いになってリフォーム工事を行うお客様、ローンを使わずとも耐震改修を行うお客様に対しては「無償」でこの証明書を発行しております。これは弊社が「設計事務所である」ことを最大限に生かしたサービスであると考えています。

リフォーム工事、増改工事をお考えの場合には、こうした公的書類を発行できるか?という部分も、業者選定の際にお考えいただければと思います。




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